Dr.Watanabe’s tax column ドクター渡辺の税金講座 渡辺 豊 税理士事務所代表

令和3年度 税制改正
登録免許税の軽減特例の見直しと延長

Q1.
不動産の登記に係る登録免許税の軽減措置が延長されたそうですが、どんな内容ですか。
A1.
登録免許税とは登記簿等に登記等をするときに納める税金です。
  1. 不動産の登記に係る登録免許税は、固定資産税評価額を、住宅ローン等の抵当権の設定登記は債権金額をそれぞれ課税評準として、その課税評準に税率(下記(表1)の本則税率)を乗じて税額を計算します。

    なお、居住用家屋の新築又は取得や土地の売買、抵当権の設定登記には軽減税率(下記(表1)の軽減税率)が設けられています。

    令和3年度の改正により、この税率・軽減措置のうち、土地の売買による所有権移転登記の適用期限が令和5年3月31日まで延長されました。

    • 住用家屋等に係る登録免許税の税率軽減措置(表1)
      (注1)①・②・④は自己の居住用家屋で新築又は取得後1年以内にする登記に限られます。
      (注2)①・②・④は床面積が50㎡以上である住宅に限られます。
      (注3)②は取得日以前20年(耐火建築物は25年)以内に建築されたもの、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準等に適合しているもの、既存住宅売買瑕疵担保責任保険が締結されていることのいずれかを満たす住宅を取得(売買又は競落に限る)し、取得後1年以内にする移転登記に限られます。
Q2.
相続に係る所有権の移転登記の免税措置が見直され、かつ延長されたそうですが、どんな改正ですか。
A2.
  1. 1.制度の背景等

    所有者不明の土地が平成28年時点で九州を上回る410万ヘクタールあり、このままでは令和22年には北海道の約9割の720万ヘクタールに達するとの推計が公表されています。
    所有者不明土地の発生によってさまざまな問題が生じており、その経済損失は令和22年までの累計で約6兆円と見積もられています。
    そこで一定の相続に係る土地の所有権移転登記の登録免許税の免税措置が設けられています。

  2. 2.改正前の制度のあらまし

    • 1)相続登記が未了で数次相続が発生している土地の免税
      個人が相続又は遺贈(以下「相続等」といいます)により土地の所有権を取得した場合において、その個人がその相続によるその土地の所有権の移転を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間にその個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないこととされていました。
    • 2)行政目的のため相続登記を促進する必要のある土地の免税
      個人が所有者不明の土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)の施行の日から令和3年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、その土地が相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものであり、かつその土地のその登記に係る登録免許税の課税評準たる不動産の価額が10万円以下であるときは、その土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととされています。
  3. 3.改正前制度の適用期限の延長

    上記2の1)及び2)の制度は、令和3年度改正により、令和4年3月31日まで適用期限が1年延長されました。

  4. 4.制度改正(適用対象の拡大)の内容

    • =行政目的のため相続登記を促進する必要のある土地の免税の対象となる登記範囲の見直し
    • 1)改正の趣旨
      この特例は、いわゆる所有者不明土地問題の要因の一つである相続登記未了の土地を今後発生させないために創設され、その後この特例の適用件数は順調に推移し、この問題に一定の効果が生じています。
      一方で、この特例の対象となる登記は、不動産登記簿等の権利部の登記名義人に相続が発生した場合に行う相続による所有権移転登記に限られていました。
      ところが、何らかの事情により権利部の登記がされず、表題部に故人が所有者として登記されている土地も散見され、こうした土地については表題部所有者(故人)の相続人が所有権の保存登記をすることができることになっていますが、その保存登記は免税措置の対象とはなっていませんでした。
    • 2)改正の内容(=適用対象の拡大)
      相続に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置について、令和3年度改正により、適用対象となる登記の範囲に表題部所有者の相続人が受ける土地の所有権の保存登記が加えられました。
    • 3)適用関係
      上記2)の改正は、令和3年4月1日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用されます。
  5. 5.補注

    • 1)相続等による所有権の移転登記に係る登録免許税は不動産の固定資産税評価額を課税評準として、税率は0.4%となっています。
    • 2)本件免税措置は、この相続等に係る登録免許税を免除する措置ということです。
Q3.
今後の少子化を見据えた所有者不明土地等の増加を防ぐための検討がされているようですが、どんな仕組みが予定されていますか。
A3.
民法・不動産登記法の見直し中間答申から、次のようなことが検討されているようです。
  1. 1.相続登記申請の義務化

    所有者不明土地の発生を防ぐため、相続が発生した場合に相続人や受贈者などが相続登記をすることを義務化し、一定期間に登記しなかった場合は一定額の過料を科すことが検討されているようです。

  2. 2.土地所有権の放棄制度の創設

    • 1)人口減少により土地の需要が縮小しつつあり、特に地方においては価値が下落する土地が増加傾向にあります。そのため土地の譲渡が困難になり、その管理費負担を嫌って、遺産の共有状態で放置したり、相続が放棄されて土地が放置される例が増えています。
    • 2)そこで、土地の所有者は法律によってその所有権を放棄することができる案が検討されているようです。
      放棄後の管理やその費用負担については、放棄された土地の元の所有者に一定の管理費負担を設ける方策や、空き地等の適切な管理・流通・再生を担うランドバンクの設立なども検討されています。
  3. 3.遺産分割期限の法制化

    • 1)遺産分割手続きがされないまま長期間経過した場合における遺産の合理的分割制度の創設が検討されているようです。
    • 2)この経過期間については、今のところ10年が有力で、相続開始から10年経過後には、各相続人は遺産の分割がされていない財産については、法定相続分(指定相続分が指定されているときは指定相続分)により強制的に取得する案が検討されています。