Dr.Watanabe’s tax column ドクター渡辺の税金講座 渡辺 豊 税理士事務所代表

令和3年度 税制改正
住宅ローン控除制度の拡充と「ローン控除特例」の延長

Q.
令和3年度税制改正で住宅借入金等特別控除(以下「住宅ローン控除」といいます)における「控除期間13年間の特例」の延長と、現行制度の一部緩和措置が加えられたそうですがどんな改正ですか。
A.
  1. 一.現行の住宅ローン控除制度

    • 1.個人が新築住宅の取得し、もしくは既存住宅の取得又は自己の所有しかつ居住している住宅に一定の増改築等(以下「住宅の取得等」といいます)をして、自己の居住の用に供した場合において、その者がこれらの「住宅の取得等」のための一定の借入金等(以下「住宅借入金等」といいます)を有するときは、その居住の用に供した年(以下「居住年」といいます)以後10年間の各年分の所得税額から住宅ローン控除額を差引くことができます。
      またその「住宅の取得等」が「特別特定取得」に該当するときは、さらに3年間の特例控除が認められています。
      (詳細は下記の<表1>及び<表2>ご参照)
    • 2.平成26年4月1日から令和3年12月31日までの間に居住の用に供した場合の、住宅ローン控除、及び認定住宅の新築等を行った場合の住宅ローン控除制度
      1)一般住宅の取得等に係る住宅ローン控除 <表1>
      2)認定住宅(認定長期優良住宅又は認定低炭素住宅)の取得等に係る住宅ローン控除 <表2>
      (注1)「特定取得」とは住宅の取得等に係る消費税率8%である場合の住宅の取得をいいます
      ①平成26年4月1日以降消費税率が8%へ引き上げの影響を緩和するため、住宅ローンの年末残高の限度額が4,000万円(認定住宅の場合は5,000万円)に拡大されています。
      ②平成31年3月31日までに住宅の請負契約をして、建物の完成引渡しが令和1年10月1日以後となった場合で、経過措置により消費税率8%が適用されているケースを含みます。
      (注2)「特別特定取得」とは、住宅の取得等に係る消費税率が10%である場合の住宅の取得をいいます。
      ①令和元年10月1日以後に住宅の取得等をして消費税率10%が適用された場合は、上記(注1)の緩和措置の適用に加えて、後述3の「住宅ローン控除の特例」が創設されています。
      (注3)特定取得に該当しないケースとは、消費税率8%以上が適用されない住宅の取得等の場合をいい具体的には個人間売買等が該当します。
    • 3.特別特定取得の場合の住宅ローン控除の特例
      これは消税率を10%へ引上げによる住宅に係る駆け込み・反動減対策のための住宅ローン控除期間の特例です。
      1)適用要件
      ①個人の住宅の取得等の対価に含まれる消費税率が10%(=特別特定取得)であること
      ②住宅の取得等をした家屋を令和1年10月1日から令和2年12月31日までの間(取得等から6ケ月以内)に自己の居住の用に供したこと
      ③適用年の11年目から13年目までの間も特別特定取得に係る住宅ローン等の残高を有すること
      2)「住宅ローン控除の特例」の控除額
      ①令和元年10月1日以後に住宅の取得等をして消費税率10%が適用された場合は、上記(注1)の緩和措置の適用に加えて、後述3の「住宅ローン控除の特例」が創設されています。
      • イ)住宅借入金等の年末残高(4,000万円限度)×1%
      • ロ)(住宅の取得等の対価の額-当該対価に含まれる消費税等の額)
        (4,0000万円限度)×2%÷3
      ②認定住宅の場合は次のいずれか少ない額が3年間控除されます。
      • イ)住宅借入金等の年末残高(5,000万円限度)×1%
      • ロ)(住宅の取得等の対価の額-当該対価に含まれる消費税等の額)
        (5,0000万円限度)×2%÷3
    • 4.(補注)「住宅取得等の対価の額又は費用の額」の範囲について
      1)「住宅ローン控除」(当初の10年間に適用)の控除限度額の計算においては、住宅の取得等に関し、補助金等の交付を受ける場合、又は一定の住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、これらの金額を住宅取得等の対価の額等から控除することとされています。
      2)「住宅ローン控除の特例」(追加の3年間の適用)の控除限度額の計算においては、住宅の取得等に関し、上記補助金等又は一定の贈与の金額は、住宅の取得等の対価の額等から控除しないこととされています。
    • 5.住宅ローン控除が適用されない年分
      次の(1)から(3)までのいずれかに該当する年分については、住宅ローン控除は適用できません。
      • (1)合計所得金額が3,000万円を超える年分
      • (2)その年の12月31日まで引き続いて自己の居住の用に供していない年分
      • (3)ローン控除の適用対象となる住宅の取得等をして居住の用に供した居住者がその居住年を含む前後2年間において、以下のいずれかの特例の適用を受けている場合には、住宅ローン控除そのものが全期間に亘って適用できません。
        つまり、新規取得住宅に住宅ローン控除の適用を受けるか、従前の住宅に下記の居住用財産の譲渡所得の課税の特例等の適用を受けるか、いずれかを選択すべきことになります。
        • イ)居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円控除)特例
        • ロ)長期所有(10年超)居住用財産の長期譲渡所得の軽課特例
          (注)上記3,000万円控除特例適用後の譲渡所得が6,000万円までは所得税10%、住民税5%の税率で軽課されます。
        • ハ)特定の居住用財産の買替え等の場合の課税の特例
          (注)長期所有(10年超)居住用財産で10年以上居住の用に供していたものを譲渡して、その年の年末までに買替資産を取得し、かつその翌年末までに自己の居住の用に供したときは、譲渡収入金額が買替資産の取得価額を上回る部分の金額についてのみ、長期譲渡所得として課税されます。
        • ニ)既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物の建設のための買替え等の場合の課税の特例(立体買替えの特例)
          (注)既成市街地等内にある土地等を譲渡し、その譲渡した土地等の上に建築された中高層耐火共同住宅、及びその敷地持分とを交換取得して、取得後1年以内に事業の用又は居住の用に供したときは、交換譲渡収入が買替資産の取得価額を上回る部分の金額についてのみ譲渡所得として課税されます
      • (4)住宅ローン控除の適用対象となる家屋に入居した年の翌年以後3年以内の各年中に、その家屋以外((旧居住用資産)の譲渡をした場合において、その旧住宅の譲渡について上記(3)のイ)~ニ)の特例の適用を受けるときは、住宅ローン控除との選択適用となります。(既に新住宅でローン控除を受けているときは、修正申告により返還を要します。)
      • (5)認定住宅の新築等について、「認定住宅新築等特別税額控除」制度による所得税額控除の適用を受けるときは、住宅ローン控除との選択適用になります。
        (注)認定住宅新築等特別税額控除の適用を受ける場合の控除額の計算
        • (※1) 認定住宅の構造上の区分に関わらず1㎡当り43,800円×その認定住宅の床面積
        • (※2)「特別特定取得(消費税10%)に該当するときは最高650万円となります。
  2. 二.令和3年度改正事項

    • 1.現行制度の内「特別特定取得の場合の住宅ローン控除の特例」(以下「控除期間13年特例」といいます)について、入居期限の延長
    • 1)新型コロナ対応での入居期限1年延長 「控除期間13年特例」は、当初は消費税率10%への引き上げ対策として、令和2年12月31日までに入居した者に適用される時限措置でしたが、新型コロナ対応で入居期限が令和13年12月31日までに延長されていました。
    • 2)今年度税制改正で「控除期間13年特例」は、住宅の取得等で特別特例取得(注)をした者が令和4年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合にまで、入居期限が再延長されました。
      (注)再延長された「控除期間13年特例」適用対象となる「特別特例取得」とは、その対価の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等であり、かつ次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める期間内にその契約が締結されているものをいいます。
      • ①居住用家屋の新築
        =令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
      • ②居住用家屋で新築後使用されたことのないもの、若しくは既存住宅の取得又は増改築等
        =令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間
    • 2.床面積基準の緩和
    • 1)住宅ローン控除制度上適用対象となる住宅の床面積は50㎡以上とされていますが、今年度改正で再延長された「控除期間13年特例」の対象となる住宅の取得等に限り、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅についても適用できることとされました。
    • 2)ただし、上記緩和された床面積基準を適用した「控除期間13年特例」には、所得制限が付されており、その者の13年間の控除期間のうち、その年分の所得税の合計所得金額が1,000万円を超える年分については適用されません。
    • 3.適用期間
      上記1.2の改正は、それぞれに記載した期間に契約、入居した者に適用があります。